チャーシュー麺&マヨチャーご飯【蓮田SA上り線】

蓮田SAのチャーシュー麺とマヨチャーご飯

東日本を南北に貫く東北自動車道、その蓮田SAはNEXCO東日本で最大級のSAだ。平日の午前11時、その蓮田SAのフードコートをうろつく怪しい男の姿があった。その男は、立ち並ぶフードコート各店に掲げられたメニューを端から端まで目を走らせている。その眼光は鋭く、さながら獲物を狙う獣のようだ。

その男は今、空腹と戦っていた。どの店のメニューも旨そうに見える。以前食った鶏カツ丼、これは旨かった。生姜焼き定食も確認できる、この男は生姜焼きが好きで良く食べるのだが、昨日食ったばかりではその気になれない。

迷っているうちに空腹感は更に増大し、すでに男の意識は飛びそうだ。これ以上迷っている時間はない、早く決めてオーダーしないと三途の川を渡りかねない。そして男が決めたのはラーメンだった。

「せたが屋」それが男が選んだ店の名前だ。深谷ねぎチャーシュー麺、せたが屋らーめん、それらは過去に実食済み。ならば今回はシンプルにチャーシュー麺といこうか。まて、それだけでは男の腹を満たすには心許ない。もう一品欲しいところだ。しかしラーメン屋の影の主役たる餃子は、メニューに見当たらない。だが、このときに限っては幸いだった。なぜならこの後、人に会う予定があるのだ。ニラやニンニクのオーラを纏う訳にはいくまい。

そして男が選んだサイドメニューは、マヨチャーご飯。初めてオーダーするが名前からすると、マヨネーズとチャーシューを和えた丼飯だろう。カウンターで会計を済ませ呼び出しブザーを受け取った男は、フードコート内の空いている席に腰を下ろした。

まだ食事の時間には早いせいだろう、周囲は空席だらけで人影はまばらだ。人混みが嫌いな男にとっては快適なことで、混雑する時間を避けることが常なのだ。人混みの中で食事をする奴らの気が知れない、騒々しくて食事に専念できないではないか。食事というのは生命力を充填する神聖な行為だ、何者にも邪魔されず集中して行うべきだ。そんなことを考えているうちに、男の手元にあるブザーが鳴動した。

男の目の前にあるチャーシュー麺は盛んに湯気を放ち、まるで熱々であることを主張しているようだ。そしてラーメンのお供たる、マヨチャーご飯の姿もある。マヨチャーご飯はサイドメニューらしく、ハーフサイズの大きさだ。

ご注文の品は以上でおそろいである。

空腹に耐えかねた男は飢えた獣のように・・とはならず、まずはラーメンのスープを一口すすった。熱々のスープが食道を駆け抜け、五臓六腑に染み渡る。煮干しの香りが強烈なスープだ。そして麺だ、細めではあるがスープが良く絡んでいる。この男の好みは太麺なのだが、この麺は旨いと感じている。麺の太さが味を決める訳ではないことを、男は再確認したのだ。

大判のチャーシューが実に4枚も乗っている。その内の1枚を頬張った瞬間、男は両の目を見開いた。それは想像していた以上の旨さに衝撃を受けた証だ。柔らかい、口の中でとろけるように消えていくチャーシュー、一体どれだけの時間を煮込めばこうなるのだろう。味だってしっかりと染みている。メンマだって同じように極太なのに柔らかい。このラーメンはまさに絶品、男はそれ以外の感想が出てこない。

蓮田SAのマヨチャーご飯

それではお供のマヨチャーご飯も試してみよう。ラーメンに乗っていたチャーシューが絶品だったのだから、きっとこれも旨いはず。男の期待は急上昇、うなぎ登りというヤツだ。いやまて、過度な期待は禁物だ。ラーメンのチャーシューが旨かったからといって、これも同じとは限らない。男ははやる気持ちを抑え、慎重に箸をすすめることにした。

まずは具材の観察しよう。ほぐしたチャーシューにマヨネーズが和えてある、これは名前から想像できる。そしてまぶしてあるネギ。ネギが好きなその男にとって、嬉しい限りだ。良く見るとなにかフレーク状のものが見える。男は訝しげにそれを箸でつまみ、口へと運ぶ。

なんと、それはガーリックチップではないか!これは旨い、この男は何よりもニンニクに目がないのだ。予想していなかったその出会いは僥倖・・・!?そのとき男はあることを思い出していた。これから人と会う予定があったのだ。しかし今さら後には引けない。男は気が付かなかったことにしようと決めた。そう、俺はニンニクなど食ってはいない。男は自らに言い聞かせ、マヨチャーご飯を味わうことに決めた。

マヨチャーご飯はまさに至高の一杯だ。このとき男は思った、これは脇役ではなく、主役を張るだけの実力がある。ほぐしたチャーシューとマヨネーズを和え、白飯に乗せガーリックチップをまぶす。ひとつひとつはどこにでもある具材だが、それらが絶妙なバランスで混ざり合っている。このとき男は幸せのオーラに包まれていた。

しょせんラーメンのお供と軽く見ていたが、なんという伏兵だろう。まさかこれほどの旨さとは。すべて食べ終わったときには、すっかり主役の座を奪っていた。この男にとって、この日の昼食はマヨチャーご飯一色となってしまっていた。

食器を戻しフードコートを後にする男の顔は、満足そうだ。そしていつかまた食べようと、心に誓うのであった。

ドラめしDATA
【所在地】東北自動車道 蓮田SA上り(パサール蓮田)
【訪問日】2025年2月20日(木)
【値段】チャーシュー麺:1,270円(税込)
【値段】マヨチャーご飯:350円(税込)