みちのく巡る夏の旅 – 2025 中編

いつものことながら、泊まりがけで行くツーリングの朝は早い。世間の人々が動き出す前に走り出し、クルマのいない状況で一通りドライブを楽しむためだ。しかし道の駅や観光施設などは営業していないため、どこにも立ち寄れないことが玉に瑕。しかしドライブと観光を切り分けて考えているので、そんなことは気にしない。

これから向かうは下北半島、県道25号を経由し国道338号を北へと走る。過去にも何度か訪れたことのある下北半島は、いつ来ても人の気配が少なくクルマも走っていない。当然信号だってありゃしない。そのため信じられないほど快適なクルージングが続く。

左右には森が広がっており、それをぶち抜くようにどこまでも一直線に国道は延びている。あまりに直線が長く、油断すると速度計の針が思わぬところへ行ってしまいそうになるほど。

アクセルをガツンと床まで踏んづけたら気持ちいいんだろうなぁ・・・。なんて思わなくもないですが、そんなことをしてお巡りさんに見つかっては大変です。ここは自制心というブレーキを効かせるのが紳士の嗜みというもの。

暫し走ると見えてくる目の前の山、あれって恐山?このまま登ってしまおうかと考えもしましたが、今回はパスして海沿いのルートを行くことにします。と、その前にJR大湊駅の駐車場にクルマを停めて、周囲を散策してみました。が、関東より涼しいとは言えやはり夏真っ盛り、少し歩いただけで汗ばんできたので即撤収。もうちょっと涼しければ・・。

大湊駅を後にしたBMW M340iは、海に沿って延びる国道338号をなぞるように西へと向かう。下北半島はまるで斧のような形をしていて、その先端にはマグロ漁で有名な大間町があります。そこまで行けば本州最北端に到達するのですが、今回はそこまで行かずに手前で戻って来るルート。

国道のすぐ脇はもう海で、ほんとうにギリギリのところを走っています。そこから見える陸奥湾は穏やかで、ザ・シーサイドドライブといった感じがして気分が良い。海より山の中を走る方が好きなのですが、たまにはこんなのも悪くないと思えてきます。

このままどこまでも海を眺めて走るのかと思いきや、国道は右へ折れ山の中へと向かって行くではないですか。ここから先は私の大好きなワインディング・・はぁ。交通量は多くはないものの時期的なものでしょうか、観光客と思しきクルマに前方を阻まれマイペースで走ることができません。ここは天下の公道、てめぇに都合良くいくはずもない。観光客という意味では私も同じ、のんびり景色でも眺めながら行きましょう。

観光客の車列に紛れチンタラ走ること暫し、途中で国道と別れ県道253号へと右折。ここでようやく車列から解放され、マイペース走行を開始・・・と思ったら、あっという間に道の駅かわうち湖に到着。

どうも今日は思うように自分のペースで走ることができませが、こんな日もあるってもんです。そろそろ空腹を覚える頃、ここいらで食事をしようと思って食堂を覗くと空いています。この先どこで食事ができるか分かりません、よってここで食っていくことに。

このときは無難にカレーライスをチョイス。なにが無難なのかというと、今までヒドいハズレに当たったことがありません。そう思ったのですが、ちょっと辛くて意外と旨い。事前に口コミなど下調べせず適当なところで食べる、このような孤独のグルメ的なのも旅の楽しみのひとつ。アタリだろうがハズレだろうが、それは旅の思い出。

奥入瀬渓流

そして翌日の朝一番で向かったのは東北有数の景勝地、奥入瀬渓流。人々が動き出すより早い時間に来なければ、阿鼻叫喚の大渋滞になるであろうこと想像に難くない。このときはまだ午前7時を過ぎた頃でしたが、想像した以上に人の気配があります。

十和田湖おいらせラインは目に優しい緑のトンネル、ところどころ駐車スペースがあるのですが残念ながら空きがない。一見すると路上駐車に見えますが、一応駐車スペースということでいいらしい。そしてこの程度の混雑であれば、なんだかんだと停められるもの。空きスペースを見つけ、電光石火のステアリング捌きでそこへ滑り込む。

奥入瀬渓流には遊歩道が整備されていて、川のせせらぎを聞きながら自然の中を散策することができます。手を伸ばせば届きそうなくらいの距離を流れる川は、透明度が高く非常に澄んでいてとても美しく心が洗われるようです。

日頃 都会の喧噪の中で生活していると、緑に囲まれ静かな遊歩道を歩くことは非日常であり、それが良い刺激になるのです。とは言え、どこまで続くか分からない遊歩道をいつまでも歩くわけにはいきません。最近は熊が出没するというニュースが全国を駆け巡っているので、油断していると熊に遭遇するかもしれません。なにせまだ人の少ない時間帯、警戒するに越したことはない。

適当なところで撤収し、再びM340iのエンジンに火を入れます。気持ちのいい遊歩道、できることならもっと歩きたかったなぁ、でも熊は怖いしなぁ・・。

道の駅十和田湖

奥入瀬渓流を駆け抜けると目の前に広がる湖。そこは気が遠くなるほど昔の火山活動でできたという十和田湖。その大きさは国内の湖沼で12番目。微妙な順位ですが、その景色はなかなかのもの。クルマを停め湖畔を散策してみると気温もちょうど良く、湖面を抜けてくる風がとても気持ちいい。

このときの時刻は午前9時前。ちと時間が早めのせいか人影も少なく、それがかえって静かな雰囲気となっています。観光地は賑やかなのも良いものですが、静かな湖畔は大人の時間。さて、十和田湖畔へ立ち寄ったのは散策だけでなく、もうひとつ理由があるのです。

数年前に訪れたときに購入した、りんごカレーのルーが忘れられなかったのです。どこで買ったのかも、今でも売ってるのか何も情報がありません。当時の記憶を遺跡発掘のごとく懸命に掘り起こし、たぶんここだろうと思う店を見つけました。しかも9時前ですでに営業中ときたもんだ。

そしてついに見つけた「りんごカレー・ルー」は、当時の記憶のまま。いやぁ、これ以上ないほどの戦利品を手に入れました。喜びのあまり頭上に高く掲げたい気分です。

お目当てのブツを手に入れ気分良く走り出し、小坂の市街地を目指し県道2号をトレース。このあたりから雨が降り始め、路面は完全なるウェット状態。せっかく先行車がおらずクリアなのに、ペースを上げることができません。ちと残念ではありますが無理はせず、安全運転で小坂の町へGO!

そして市街地で立ち寄ったのは小坂鉄道レールパーク。普段は鉄道なんざこれっぽっちも興味がないくせに、このような鉄道博物館的な施設は好きな俺。なぜか分かりませんがワクワクするのです。それほど大きな規模ではありませんが、寝台車の中に入れたりディーゼル機関車のエンジンが見られたりと、なかなかどうして楽しいじゃありませんか。

時間を忘れレールパークを堪能したあとは、そろそろ今宵の宿へ向かおうと思います。まだ日も高い時間ですが、早朝から動いているのでそろそろ電池が切れそうです。今から向かえば余裕を持ってチェックインできるはず。早く体を休め英気を養い、明日も早朝から行動開始のつもり。

後編につづく。