先日、高速道路の制限速度が一部、引き上げられるとの報道がありました。しかし、その対象は普通車と大型バスのみで、大型貨物は従来の80km/hに据え置きとなります。
以前から大型貨物の制限速度の上限が80km/hで、大型バスは普通車と同じ100km/hに設定されておりました。同じ大型車にも拘わらず、制限速度の設定になぜ差があるのでしょうか?
総重量と重量変化の差
大型トラックは荷物を積んでいないとき、つまり空荷(からに)の状態では重量がおよそ12t程度、最大まで積載したときはおよそ25tにもなります。正確な重量は、それぞれ車両重量や最大積載量によって多少の違いはありますが、空荷と満載では約2倍の開きがあるという風に考えてもらって良いでしょう。
これに対して大型バスは、乗客と荷物の分しか重量が変化しません。定員60名で一人10kgの荷物を持ち込むとして、60名×55kg=3,300kg、10kg×60個=600kg、合計すると3,900kgとなり、トラックに比べて重量変化が少ないことが分かります。
大型小型を問わず、トラックを運転した事があれば分かるのですが、空荷と満載では、加速、制動力、ステアリングに対する応答性、すべてがまるで別のクルマのように違ってしまいます。さらに、積荷の大きさや積み方などによっては、車両の重心までも変化してきます。特にやっかいなのが液体で、液体を充填したコンテナなどを積もうものなら、とにかく重心が安定しません。
事故が起きた際の影響
同じ大型車とは言え、荷物満載のトラックの方が大型バスより重量が嵩みます。そうなると事故が起きたときの影響は、トラックの方がより深刻になると考えられています。もっとも、トラックが載せているのは荷物でバスは人間なので、必ずしもこの考えが正しいと言えないかも知れませんが、トラックの積荷がガソリンなどの危険物ということもありますので、やはりトラックの事故の方が深刻なもとなるリスクが高いと言えるでしょう。
また、バスはトラックに比べて事故率が低いということも関係しています。そもそも走っている台数に差があるとは言え、この辺りは感覚的に理解できるかと。事故率が低い理由ははっきりしませんが、バスのドライバーは上位免許である大型2種を保有しているので、ドライバーのレベルがトラックに比べ高いのかも知れませんね。と言うより高いのでしょう、より難易度の難い免許を持っているのだから。
結論
結論としては、荷物や乗客を乗せた際の車両特性の変化、トラックとバスの事故率の差、事故が起きたときの影響、この辺りを総合的に判断して制限速度が決定されているわけです。