カタログや車検証をよく見ると、燃料の項目に無鉛レギュラーとか無鉛プレミアムと記載されています。ということは、無鉛ではなく有鉛のガソリンもあるのかと疑問に思えてきます。
かつては有鉛ガソリンが主流
現在販売されているガソリンは、いわゆる無鉛ガソリンというものです。無鉛ということは、有鉛もあるのか?と思うでしょうが、かつては有鉛ガソリンが当たり前の時代がありました。
有鉛ガソリンとは、ノッキングを防止するアンチノック剤としてアルキル鉛が配合されているガソリンのこと。このアルキル鉛は、毒物劇物取締法によって毒物に指定されている有害物質であり、そのため自動車の排気ガスに含まれる鉛の対策を行う必要が生じました。
1975年2月1日生産分からレギュラーガソリンが無鉛化されましたが、この当時は無鉛のハイオクガソリンが製造できなかったため、ハイオクの無鉛化は1983年まで待たなくてはなりません。
そして1983年に無鉛ハイオクが発売され、その3年後の1986年に有鉛ガソリンが全廃となり、これで市場から有鉛ガソリンが姿を消しました。
有鉛仕様のエンジンに無鉛ガソリンは使用できるか
有鉛ガソリンが当たり前だった時代に製造された車、今では殆ど見ることはなくなりましたが、一部の愛好家などが大事に乗っているのも事実。
そこで一つの疑問が浮かびます。有鉛ガソリンを使用する前提で設計された車に、今の無鉛ガソリンを使用しても大丈夫なのかと?
結論から書きますと、そのままでは良くありません。
ガソリンにアルキル鉛を添加していた理由は、ノッキング防止だけが理由ではありませんでした。エンジン内部にはバルブシートという部品があり、これがエンジンの高熱とバルブ開閉時の衝撃で摩耗していくのです。鉛にはこれを緩和する効果があったため、ガソリンに添加されていました。
つまり有鉛仕様のエンジンに現在の無鉛ガソリンを使用すると、このバルブシートを傷めてしまい、燃焼室の気密性が保たれずトラブルの原因となってしまいます。これを防ぐには、バルブシートを保護するために添加剤を使用するか、バルブシートを交換するなど、エンジンを無鉛仕様にすれば良いのです。
有害性のため有鉛から無鉛へと変わっていったガソリン。近年では、CO2や地球温暖化などの影響で、電気自動車へと変わろうとしています。
数十年後には、「昔の車はガソリンで走った」なんて言われる時代になっているかも知れませんね。