スカイラインGT-R(R32、R33、R34)のレストアビジネスをNISMOが開始

BNR32

NISMOが第二世代GT-Rのレストアビジネスを開始

少し前の話になりますが、NISMOが第二世代GT-Rのレストアビジネスを始めたと発表がありました。

ニスモは、2017年11月より、製造廃止となっていた純正部品の復刻販売を行う「NISMOヘリテージ」を日産自動車との共同プロジェクトとして実施してきました。その活動を進める中で、ニスモのスカイラインGT-Rでのレース活動を支えたクルマ作りのノウハウ、そして、ニスモ直営店で提供してきたメンテナンスやチューニングの知見や技術を土台とした「ニスモが考えるレストア車」を新たに定義し、「NISMO restored car」の名称で立ち上げました。ニスモ直営店にてコンプリートカー販売及び持込車への施工を実施します。

日産自動車の直系であることを活かし、「性能の可視化」と「新車レベルの性能に近づける」を掲げる、ニスモが提案する新たなレストア施工、「NISMO restored car」の基準は、世界的に新たな価値を獲得し始めたスカイラインGT-Rをはじめとする日本車をより良いコンディションで後世へ残すことにもつながる活動と考えています。

引用元:NISMO https://www.nismo.co.jp/#__cate_al

NISMO(ニスモ)とは?

NISMOとは、Nissan Motorsports Internationalの略称。日産自動車の子会社で主にモータースポーツへの参画、チューニングパーツの設計・販売などを手がけている企業。

第二世代GT-R

今回レストアビジネスの対象となった第二世代GT-Rとは、R32型・R33型・R34型のスカイラインGT-Rを指しています。かつてレースの世界で破竹の連覇を成し遂げたハコスカGT-RやケンメリGT-Rは、第一世代のGT-R。ケンメリGT-Rはわずか197台のみの生産で終わり、その16年後にR32型が登場するまでGT-Rを名乗るグレードはありませんでした。

そして1989年、ついに新たなスカイラインGT-Rが誕生しました。このR32型GT-Rは、2.6L直列6気筒ツインターボという専用のエンジンと、ATTESA E-TS、SUPER HICASという当時の最新技術で武装して登場。GT-Rの名に恥じることなく、レースの世界で数々の栄光を掴んだのです。

そのR32型の基本設計を引き継いだR34型までを、第二世代と位置付けています。

そもそもレストアとは?

レストアとは単なる修理のことではありません。事故などで破損した車両を修理する通常の整備とは違い、製造から相当年数を経過し老朽化した車両を「復活」させることをレストアと呼びます。

NISMOにしかできないレストア

補修部品の入手が困難

第二世代GT-Rのもっとも古い個体は、1989年(平成元年)製造。すでに30年超の年月が経過しており、通常の整備だけでは相当に老朽化が進行しているはずです。こうなると最も苦労するのは、補修部品の入手です。私もかつて20年超経過した車両を維持していたのですが、これも入手困難な部品がありました。純正の新品が廃番ならば中古部品やリビルド品、あるいは純正以外の部品で補修をするしかありません。このような苦労も大好きな車を維持するためであれば、大した苦にならないのですが、やはりどこかで大規模なリフレッシュが必要になってきます。

ボディレストア

今回NISMOでは、「ホワイトボディ捻れ剛性」と「ボディ寸法測定」を含めた修復を行ってくれます。これはもうメーカー直系のNISMOでしかできない作業と言っていいでしょう。自動車のボディというのは、走行距離を重ねるごとに剛性が低下してきます。低下したボディ剛性を復活させることは至難の業で、通常の整備工場では補強パーツを取付けることが一般的な手法でしょう。他にもスポット増しや、一時期流行ったウレタン補強などもありますが、どれを施工するにせよ、通常は「ボディ捻れ剛性」の測定まではできません。

エンジンおよび駆動系

エンジンのオーバーホールとバランス取り後、ベンチ台の上で新車時レベルの性能が出ることを確認。駆動系も同じようにオーバーホールと作動確認が行われます。このあたりの作業は、いわゆるチューニングショップなどでも可能と思われますが、NISMOであれば期待以上の仕事をしてくれることでしょう。

内装のリフレッシュ

旧車の維持において、補修部品の入手と共に問題となりがちなのが内装の劣化。機械部品は純正品が手に入らなくても、アフターパーツを利用したり、他の車両の部品を加工して使うことも可能です。しかし内装というのは、なかなかそうは行きません。

シートやステアリングなど一部には純正以外の部品も流通していますが、ドアの内張やダッシュボードなどは専用のものが少なくないので、他車種用のパーツを加工して取付ける訳にはいきません。これをNISMOではR35型GT-Rの表皮を使用して、張り替え作業を行ってくれます。

プロドライバーのテスト走行

NISMOにしかできないレストア作業の極めつけは、最後の完成検査にあります。シャーシダイナモでの性能測定後、NISMOのテストドライバーまたはプロドライバーによるチェック走行で、性能の最終確認が行われます。

これは本当に羨ましい話です。愛車がレストアされ、プロドライバーのドライビングで最終チェックとは。私もかつて大枚叩いてリフレッシュを行ったことがありますが、あくまでテスト走行は整備士でありプロドライバーではありません。ここまで至れり尽くせりの作業が行えるのは、やはりメーカー直系のNISMOならではと言ったところ。

第二世代GT-Rは歴史に残る名車

大事に乗って頂きたい

最近R32型GT-Rの中古車が、海外に流出しているという話を耳にします。これはアメリカの25年ルールというやつで、製造から25年を経過した車両は関税や排ガス規制の対象外となり、輸入しやすくなるためです。

もともとスカイラインは日本国内専用車であったため、正規に輸出された個体は多くはありません。他国の方にもその名が知られファンがいるというのは嬉しい限りですが、やはり流出してしまうのは寂しいことです。

NISMOがレストアビジネスを始めたことをきっかけに、これからもGT-Rのオーナーさん達には、大事に乗り続けて頂きたいと思っています。ちなみに私がかつて大事にしていた20年超の車もGT-Rではありませんでしたが、スカイラインでした。