MT免許の廃止が目的か?それはドライバーの質を下げるだけ むしろAT限定を廃止しろ

2025年4月以降はMT免許離れが加速

2025年4月以降 自動車教習所の教習課程が変更され、原則すべてAT車で行うよう制度が変更されるとのこと。どのように変わるかというと、場内教習と路上教習のすべてをAT車で行い、見極めに合格してから合計4回のMT教習を行うというもの。従来のイメージに当てはめると、まずAT限定免許を取得しその後限定解除を行うと考えれば良いかと。

なぜこのような制度に変更するのか理解に苦しみます。もともとAT限定の場合は最初から最後までAT車しか使用しないので、何も変わることはありません。しかしMT免許の場合、最後にわずか4回の教習でクラッチ操作を覚えることができるのでしょうか?

私もMTで運転免許を取得しました。教習のほぼ全てをMT車で行いましたが、免許取得後もクラッチやシフト操作に戸惑い、よくエンストしたものです。この経験からわずか4回の教習で、MT車の操作を身につけられるとは思えません。

このような制度変更を行えば、特段の理由がないとMTを選択する人が間違いなく減ることでしょう。本当に何を考え、何を目的とした変更なのか分かりません。国はMT免許を廃止したいのでしょうか?

AT限定免許取得者は約7割

普通自動車運転免許にAT(オートマ)限定が設けられたのは、1991年のこと。この頃までは新車販売台数では、MT/ATの比率はほぼ半々でした。それまでも自動車教習所においてAT車の教習はカリキュラムに組み込まれていたのですが、免許取得後にアクセルとブレーキの踏み間違いを原因とする急発進など、AT車特有の事故が多く見られるようになりました。それと同時にMT車を運転する機会が減少したとして、教習カリキュラムをAT車の特性に絞ったAT限定免許が導入されたのです。

かつては「AT限定は恥ずかしい」「AT限定は就職のときに不利になる」など馬鹿にされた時代もありましたが、今や普通自動車運転免許保持者のうち、約7割がAT限定とされています。

この当時はトラックやバス、営業用バンなど仕事で使用する車両はMTがほとんどで、AT限定だと就職に不利であったことは事実。求人票にもAT限定免許は不可と書かれていたものです。これは今でもときどき見かけますが、以前に比べると格段に減っています。今や営業用バンはおろか、大型トラックですらAT車がある時代なのです。

自家用車に至っては99%がAT車で、一部のスポーツモデルぐらいしかMT車はありません。それどころか、そのスポーツモデルでさえも2ペダルが主流になりつつあるのが現状。これほどAT車が普及しMT車に乗る機会が減ったとあれば、AT限定で良いと考える人が増えるのも当たり前というもの。

むしろAT限定を廃止すべき

政府は一体何を考えいるのか。むしろAT限定免許を廃止するべきです。以前、次のようなコラムを書いたことがあります。

このときも書きましたが、改めてAT限定免許はドライバーのレベルを下げるだけだと主張したい。現在では販売されているクルマのほとんどがATのみ設定で、MT車に乗る機会など滅多にないのが実情。そのことを考えれば教習時間や費用が安く済むAT限定免許を選択することは、合理的な判断と言えなくもありません。

シフトチェンジやクラッチ操作のいらないイージードライブは、オートマチック車の最大の利点。しかしMT車を運転できるドライバーがAT車を選ぶことと、オートマチックでないと免許の試験に合格できないから選ぶのでは、天と地ほどの差があります。

オートマチックでないと運転できないようなドライバーは、遊園地のゴーカートで満足してろと言いたい。

良く言われることに、車は走る凶器という言葉があります。軽自動車で1t前後、普通乗用車で1.5t~2.0tもある鉄の塊が人にぶつかればどうなるか、人間などひとたまりもありません。その危険な機械を扱う資格を得るハードルは、高くあるべきと考えます。

よってAT限定を廃止し、すべてMT車で教習を行えば一定の足切りとして機能するはず。またAT限定免許保持者はトランスミッションの働きを理解できておらず、長い下り坂でエンジンブレーキを使用しない傾向が見受けられます。全員がMT車で教習を行うことで車の構造などにも一定の理解が得られ、多少なりとも安全運転に繋がることが期待できるでしょう。

AT車での余裕は安全運転に振り向けよ

先述のとおりAT車はMT車と比べて、楽に運転できることが最大の利点です。そもそもドライバーにとって最優先事項は安全に対して注意を払うこと、すなわち安全運転です。AT車に乗ることによってシフト操作から解放され、ドライバーにはその分の余裕が生まれるはず。

本来であれば、その余裕は安全のために振り向けられなければなりません。しかしあろうことか運転中に携帯電話を使用したり、あまつさえ雑誌などを読むことに振り向ける大馬鹿者が後を絶ちません。さらに一般のドライバーだけでも許されることではないのに、トラックドライバーなどプロと呼ばれる人たちにもいる始末。

世間のドライバーがこの体たらくでは、いっそのことAT免許どころかAT車を廃止したほうがいいのかもしれません。